5月のベストフォト

今回五月のベストフォトに選出した理由は、「子どもならではの自由さや自然な楽しさ」が、この一枚に見事に写し取られているからです。仕草や表情、そのすべてから伝わってくるのは、飾らない“いまこの瞬間”のきらめき。まさに写真でしか残せない、かけがえのない一瞬だと感じました。
画面中央でベルをぎゅっと握りしめる女の子は、こちらに微笑みかけながらも、どこか自分の世界を楽しんでいるような自然な表情を浮かべています。この笑顔には、演出されたものではない“その子らしさ”が詰まっており、シャッターを切ったカメラマンが、その自由を邪魔せず、むしろ大切に受け止めながら撮影していることが伝わってきます。
背景には三日月型のモチーフや本の小道具が配置されており、まるで絵本の中の一ページのような世界観が広がります。やわらかな逆光に包まれたこの空間は、光がふわりと回り込み、全体のトーンをやさしく統一しています。グリーンのドレスの透け感やふんわり広がるチュールの動きが、子どもの無垢な存在感をより引き立てており、まさに“今しか撮れない”瞬間をかたちにしているのです。
このような写真に仕上がった背景には、カメラマンの深い観察力とタイミングを逃さない判断力があると感じます。子どもは決して思い通りに動いてはくれませんが、だからこそ、自然な動きの中で光・構図・仕草・背景すべてが重なったタイミングを「見極める目」と「待つ力」が求められます。この写真は、そうした力が結実した、非常に完成度の高い一枚です。
ノーブレムが大切にしている「今この瞬間を大切にすること」、それを写真で表現するという想いが、この作品にも確かに息づいています。写真はただの記録ではなく、感情の記憶でもあります。このお子さまの無邪気な笑顔と動きは、見る人の心をやさしく包み込み、思わず微笑んでしまうような温かさを与えてくれる一枚です。
岡崎スタジオ
Photographer Mizuno