5月のベストフォト

今回五月のベストフォトに選んだ理由は、「光とボケの表現」が非常に印象的であり、さらに全体の色調のトーンが調和していること、そして何よりも“カメラの目”でしか捉えることのできない一瞬を見事に切り取っているからです。
まず、この写真で際立っているのは、前景にふんわりと広がる美しい玉ボケの存在です。まるで花々が光の粒となって前に舞い降りてきたような演出が、まさに夢の中のワンシーンのような幻想的な雰囲気を作り出しています。赤ちゃんの表情や仕草もとても自然で、花をそっとつまむその手元の柔らかさが、この世界観に優しく溶け込んでいます。
全体のトーンは、白やベージュ、アイボリーといった柔らかな色彩で統一されており、どこを切り取っても世界観にブレがありません。背景に配されたアンティーク調の木馬やレースのテーブルクロス、乾いた質感のドライフラワーが、まるで絵本の中にいるかのようなノスタルジックな印象を加えています。この調和のとれたトーン設計は、決して偶然ではなく、カメラマンが光の方向・被写界深度・ホワイトバランスを丁寧に調整しながら撮影に臨んだことが伝わってきます。
特に注目したいのは、赤ちゃんの周囲に生まれる「空気感」です。これは、ライティングだけでなく、レンズ選びや絞りのコントロール、構図の引きと寄りのバランスを含めた“写真における設計力”があってこそ表現できるものです。被写体との距離感、背景とのレイヤーの重なり、光の入り口をどう計算するか——それらを一瞬で判断し、撮るべき一瞬に確信を持ってシャッターを切れる目と技術。それこそが、カメラの目にしか映らない世界を形にする力だと感じさせられます。
ぜひこの写真をご覧になったお客様が、「私もこんな世界の中で、我が子を残したい」と感じていただけたらと願っております。
高岳・泉スタジオ
Photographer Yamaguchi