8月のベストフォト

この写真を今月のベストフォトに選んだ理由は、「ポーズをいちからつくる」という課題に最もふさわしい完成度を見せてくれた一枚だからです。ポーズと一口に言っても、それは単に首を傾けたり、手を添えるといった単発的な動きでは成立しません。本当に自然で美しいポーズを生み出すには、手の形、指先のニュアンス、顔の向き、体の重心の置き方、目線の方向、表情を彩る口元の動きなど、複数の要素が緻密に組み合わさっていく必要があります。
写真を長く撮影していくと、その写真がどれだけの工程を経て完成しているのかが徐々に見えてきます。良いポーズに仕上がっている写真は、単なる偶然ではなく、多くの指示と工夫、そして被写体との呼吸が重なって生まれています。今回の写真もまさにその典型です。指先の柔らかい表現、顔を触れる手の位置の自然さ、目の中心をとらえるまっすぐな視線、そして口元からこぼれる表情の魅力。その一つひとつが積み重なり、見る人を惹きつける一枚へと仕上がっています。
さらに注目したいのは、カメラマンがそのプロセスを丁寧に積み重ねたことです。ただ「笑って」「手を置いて」といった単発的な指示ではなく、様々な工程を組み合わせていくことで、自然なポーズが完成しています。被写体の持つ魅力を最大限に引き出すには、こうした複合的な指示の積み重ねが欠かせません。この点において今回の作品は、課題である「ポーズをいちからつくる」ことをしっかり体現しているといえます。
この写真の魅力は、表面的な可愛らしさだけでなく、撮影の裏側にある積み上げられた工程の重みが感じられることです。見る人は気づかなくても、その完成度が「自然さ」として伝わり、安心感や心地よさとなって心に残ります。だからこそ、この写真は今月のベストフォトにふさわしいといえるでしょう。
千種スタジオ
Photographer Chiba