10月のベストフォト

今回10月のベストフォトに選んだ理由は、「家族写真の本質である“関係性の美しさ”が最も自然なかたちで表現されている」からです。
家族が寄り添い、笑顔で包み合うこの一枚には、見る人の心をやわらかく温める力があります。
父の優しい抱擁、母の穏やかな笑顔、姉の無邪気な表情、そしてその中心で安心しきったように笑う小さな子ども。
そのすべてがひとつの流れとして繋がり、家族愛を表現しています。
今回の評価ポイントは「カメラマンが意図的につくり出した空気感と距離感」です。
家族写真は単に“並べて綺麗に撮る”ものではなく、“関係を写し取る”もの。
そのためにはカメラマンがどれだけ家族に寄り添えるか、どれだけ自然な笑顔を引き出せるかがすべてです。
この写真では、撮影者自身の表情まで浮かぶような温かい空気感が漂っています。
おそらくカメラマン自身もこの家族と一緒に笑い、心から楽しみながらシャッターを切ったのではないでしょうか?その共感と信頼が、表情や姿勢の一つひとつに宿り、作り物ではない“本当の幸せ”を感じさせています。
また、ポーズの構成にも細やかな意図が見られます。
父を中心に、母と姉が自然に寄り添い、最年少の子が中心で安心感を象徴するような構図。
前後のレイヤーが美しく重なり、写真全体に奥行きとリズムを生み出しています。
家族写真の難しさは、技術よりも“被写体との距離”にあります。
この作品はその距離を超え、家族の幸せを見事に形にした一枚です。
ノーブレムが大切にしている「関係の中にある美しさ」をまさに体現した作品として、10月のベストフォトにふさわしいと感じます。
千種スタジオ
Photographer Wada






