ノーブレムの写真はできあがるまでの過程があります。

その適切な過程を踏んだうえで出来上がった写真というのは、ノーブレムを代表する一枚の写真になります。

代表する写真というのは、どのフォトスタジオにもあって、その意味は色々ありますが、

「そのスタジオの魅力を最大限伝えている写真」

「表現したいものが全て詰め込まれている写真」

「たくさんのお客様に支持された写真」

「世界観がつくられた写真」

などなど、代表される写真というのは、節目節目に必ず現れます。

写真館を運営していて、代表する写真の存在はとても大きく、この写真を生産できない場合というのは、苦境に立たされることになってしまいます。

自分自身、代表する写真を生み出さないといけないと分かっていても、それは本当に簡単なことではなく、その写真が生まれるまでは、長期間苦しみます。

一日や二日で生まれるわけではなく、二カ月三カ月半年と、代表する写真は何かをずっと考えながら、0からつくります。

出来上がった環境のなかでシャッターを押すわけではなく、環境をつくる0からスタートするので、長い道のりです。

「写真が上手くなりたいのであれば、一人で0から全ての環境をつくりなさい」、私に写真をアドバイスしてくれた先輩の一人がそう伝えてくれました。

これは今でも発展の条件だと思っています。

この写真の時も、自分自身、ノーブレムとしても、何か抜け出さなければいけない時期でした。

何か変えなければいけないし、何か突破口になる写真を出さなければいけない、そうでなければ何かが止まってしまう…、そんな強迫観念にも迫れながら、スタジオの一角をペンキを塗ることから始めました。

「この色の雰囲気であればいいのではないか?」と実際にペンキを塗ってみても思うようにいきません。せっかくペンキで塗ったペンキの壁も次の日には塗り直し…。

家具や雑貨を買ってみては、配置するも全く納得いかず、何度も何度もディスプレイをやり直しながら、毎日過ごしました。やりたいことがあるけれども、自分が思うように納得できない状況は健康的ではなかったです。

数か月間、たった二、三畳のスペースをいじくりまわし、ようやく、これでいこうと確信して写真を撮ったことを覚えています。

何も思わず写真を見れば、ただ花の前で少女が写っている写真ですが、

今でも、この背景に合うのは、被写体の位置は必ずこの位置で、この向きで、このレンズで、この画角で、この横位置が完全に正解だと思っています。

背景をつくりながら、その背景をどう写したら、一番綺麗に見えるのかを常に作ってるときに考えます。数か月間考えながら、後、一枚のシャッターをきった時、ようやく代表する写真ができました。

代表される写真はその後、ホームページのトップを飾ることになります。

0から環境をつくることは、必然的に創造する筋力を鍛えます。

今から新しく岡崎店が始まります。

今までとは何か違うものを生み出さないというプレッシャーと数か月共に過ごすことが始まります。新しく生まれる代表写真を楽しみにしながら、またせかせかとペンキを塗ることからはじめてみようと思います。