おふたりが手にしていたのは、赤ちゃんのために用意した、まだ誰の体にも合わないちいさな服。

でも、その服をふたりで見つめる姿は、すでに“家族”でした。

マタニティフォトを撮っていると、よく思います。

「おなかに赤ちゃんがいる写真」じゃなくて、
「家族が始まる瞬間」を撮っているんだなって。

この日のおふたりも、はじめは少し照れている様子でした。

でも、ベビー服を手にした瞬間、ふっと笑い合って、空気が一気にやわらかくなったのを覚えています。

「どんな顔して生まれてくるかな」
「着せたら、ちょっと大きいかもね」

そんな会話が聞こえてきそうな、優しい時間。

写真を見返したときに、あのとき感じた気持ちまで思い出せる。

そんな1枚になってくれたら、カメラマンとしてとても嬉しいです。

撮影に来てくださるご夫婦ひとりひとりに、それぞれのストーリーがあります。

写真には写らない背景が、たくさんあることも知っています。

だからこそ、私たちは「ありのままのふたり」が,やさしく映る瞬間を、大切にしています。